中古物件を探す際、「全室稼働中!」「満室経営できます!」などの謳い文句を魅力的に感じる投資家は多くいます。しかし、「満室なら安心だ!」と安易に捉えるのは、物件によってはリスクが伴うため、慎重に選ぶ必要があるのです。
不動産投資初心者が、空室だらけの物件を購入することは望ましくありません。
しかし、満室にこだわりすぎるのも対象物件を狭めてしまうことになりかねません。
さらに、満室物件だから空室リスクが低いというわけでは必ずしもないのです。
考えてみてください。
「今」この段階が満室なだけで、この満室が未来永劫続く保証は一切ありません。その状態を長く続けられるのか、空室が出たら入居がつくのかを冷静に判断するべきなのです。
そして、「満室で高利回りの物件」があれば、まずは疑ってみてください。その満室は“つくられた満室”かもしれません。
“つくられた満室”は、一言でいってしまえば、高値で売りたい悪徳業者が意図的に満室にしているものを指します。
つくられた満室なのか、それとも本物の満室なのか――実は、これは見抜くことができます。
必要なのは、近隣の賃貸相場とレントロールです。レントロールとは、貸借条件一覧表のことで、入居状況が判断できます。
まず、レントロールで入居年月日と家賃を確認してみましょう。
もし入居者が同じ時期に一斉に入っていれば、高く売るために、空室を無理やり埋めた可能性があります。無理やりというのは、広告費を相場以上に支払う、初期費用無料など、とにかく誰でもいいから入居を決めるといった方法です。
また、とにかく満室になればいいのですから、入居審査も適切に行っていないことも考えられます。このように無理やり集められた入居者は引越しも早いものです。
また、レントロールを確認して、入居が最近にもかかわらず家賃が高いと“つくられた満室”の可能性があります。
たとえば、内装を大幅にリフォームして賃料を上げたなどのケースはいいのですが、そうでないと、売却を有利にするため、無理やり高額家賃で入れたという可能性もあります。
つまり、初期費用無料やフリーレントをつけて入居者を集めていることが考えられるのです。この場合、家賃設定が高いため、払いきれなくなって滞納が出る危険もあります。
また、相場家賃より1万円以上高いのでおかしいと思ったら、入居者が全員生活保護受給者だったという例も実際にあります。
もちろん、生活保護受給者が悪いというわけではありません。生活保護受給者は家賃滞納リスクが低いため、まったく気にしないというオーナーも数多くいます。
ここでお伝えしたいのは、前オーナーと同じ考え方で自分が投資できるかということです。自身が管理会社とのパイプを持っているのであれば、同じ管理会社を継続契約するのもいいでしょう。そして万が一、生活保護受給者が退去したときに、相場家賃でもきちんとキャッシュフローが出ていれば問題ないでしょう。
このような“つくられた満室”は少数ですが、あることは事実です。レントロールを確認したうえで、収支計算をしっかり行うことが肝要といえるでしょう。