ここ数年、「今は売り時!」という言葉をよく耳にしますが、はたしてベストな売り時とは、どのようなタイミングを指すのでしょうか?
不動産売却にあたって、最初に覚えておいてほしいことがあります。
それは、「物件を売却してはいけないタイミングがある」ということです。
まず、時間的に余裕がない状態で売るのは避けてください。
というのも、焦れば焦るほど、買い叩かれる可能性が高くなるからです。できるだけ時間的な余裕を持って売却準備をすることが大切です。
また、築古の木造アパート・戸建以外は、空室で売るよりも満室で売るほうが高値で売却できる可能性が高くなります。ですから、まずは空室を埋めることに注力すべきでしょう。
木造の場合、空室がある、むしろ全空(すべての部屋が空室であること)のほうが高く売れる可能性が高いです。
というのも、木造は「木造は建築コストが安い」という特徴がありますが、解体コストもまたRC造や鉄骨造に比べて安いからです。つまり、更地にして土地として販売することによって、ほかの物件に比べて格段に売りやすくなるのです。
また、住宅用地であれば住宅ローンも使えますから、販売ターゲットは一般のマイホームを購入される方まで広がります。
利回りといった収益性は一切関係なくなりますので、価格を周辺の土地の実勢価格(不動産の時価のこと。取引が行われた場合には、その取引金額が実勢価格になる)に合わせることをすれば、売ることは難しくないのです。
さて、ベストな売却タイミングはいつなのか。
強いて挙げるならば、新規の買い手が参入できる市況になっているときです。具体的に言うなら、「メガバンクが融資を出すとき」「地主が買っているときより、一般投資家が買っている時期」といえます。
不動産投資では「取得時に出口戦略まで考えなくてはいけない」といわれています。出口戦略とは、ベトナム戦争時にアメリカ国防省内で使用されたのがきっかけで、戦況が悪いとき、被害が大きいとき、いかに損失を少なく場を収め、撤退するかを目的とした戦略やその実地を表す言葉として、一般的に使われるようになったそうです。
それが経済学用語としても転用されるようになり、経済政策や、企業の経営、投資に際してもいかに撤収時に経済的損失を最小限にする戦略を指す用語として使われています。
たしかに物件を手放すときを想定しておくことは必要ですが、想定することと実際に売却することは別です。
売却せずに長期保有するというというのも、選択肢のひとつです。前述したように、売ってはいけないタイミングもありますし、そもそも不動産投資はキャピタルゲイン(売却益)ではなくインカムゲイン(運用益)で稼ぐものだと考えています。
ですから、「市況が上がっているようだから売ろう」と安易に考えるのではなく、長期的なライフプランを鑑みて判断すべきと言えるでしょう。