不動産投資をはじめるのなら「法人を設立すべき」というアドバイスを耳にしたことがある人もいらっしゃると思います。しかし、では「なぜ法人化が重要なのか」を具体的に説明できる方は少ないのではないでしょうか。
そこで、ここでは「法人化」のメリットを紹介します。
※法人化のデメリットについては、こちらを合わせてお読みください。
法人化が節税対策につながる最大の理由として、「個人と法人での実行税率が異なること」が挙げられます。
日本の税制度では、個人の所得税には累進課税方式が適用され、所得金額が大きくなるほど税率が高くなります。
さらに、不動産投資をしているサラリーマンの場合、不動産所得と給与を合算したものが所得となるため、高い税率をかけられてしまいます。
しかし、法人に適用される税率は個人よりも低く設定されており、しかも年々軽減される傾向があります。所得金額に応じて税率は異なりますが、最終的な納税額を減らすことが可能です。
法人化をすることで、役員報酬や社員への給与を会社の経費として計上することができます。
個人の場合、不動産で得た収入を所得にしても、給与所得控除を受けることはできませんが、法人だと他で給与を受け取っていない役員は、給与所得控除を受けられます。
したがって、給与所得を持たない妻や子供などを役員や社員にし、所得を分散して課税対象額を圧縮することで、法人の課税対象額を下げることができるのです。
また、親族や知人が仕事を手伝ってくれたときにアルバイト代として給与を支払うことができるので、役員や社員以外の人にも所得分散できます。
ただ、一人の役員に集中して報酬を分配すると対象の個人の税率が高くなってしまうので、注意が必要です。
個人と法人では経費の適用範囲が違います。法人では経費が大きくなるため、最終的には支払う税金も安くなります。
さらに融資で物件購入した場合は、個人は土地の借入金利子に係る赤字の一部が切り捨てになることがありますが、法人であれば、その切り捨てはなく、生じた赤字はすべて繰り延べられます。
また、赤字の繰り延べは個人(原則3年)に比べて法人のほうが長く、現行で9年間繰り延べることができます。
もちろん、法人でもすべてを経費化できるわけではなく、交際費の経費化など制限されている分野もあります。しかし、法人のほうが個人よりも経費化できる範囲が広いということは間違いありません。
売却益が出た際、個人だと5年以内は約40%、5年以上で20%の譲渡所得税がかかりますが、法人だと他の所得と同じ扱いになります。結果として節税対象内に入るということです。
個人の場合、所有不動産の評価額によって相続税が決められます。
しかし、法人で不動産を所有して入れば、そもそも相続税は発生しません。
つまり、個人で所有している不動産を法人に移転することで、相続税を節税できるということです。
上記に書いた通り、妻や子供を役員にして不動産所得を役員報酬として分散することで、実質的には生前からの資産移転ができ、相続税が発生したときの備えにもなります。