「一括借り上げだから安心」というセールストークを耳にしたことがある人は多いのではないでしょうか。なかには、「業者が30年、35年という長期間借り入れしてくれるなら、リスクはないはず」と思っている人もいるかもしれません。
ところが、長期一括借り上げにはデメリットもたくさんあるのです。
今回は、長期一括借り上げについて解説しましょう。
長期一括借り上げとは、投資家が保有するアパート等の部屋を全て業者に貸し出してその業者が入居者を募集するもので、オーナー(投資家)は入居率に関わらず一定の賃料を受け取ることができるというものです。
たとえば、業者がオーナーに対して、空室でも満室でも所定の家賃の80%を支払うといった契約をするわけです。
満室時の家賃よりは収入が減りますが、空室の心配はなく、安定した収益を見込むことができます。
また、建物の清掃やメンテナンス、入居者の募集や入退去の手続きも代行してもらえるので、管理の手間がかからず済みます。
「30年、35年という長期間借り入れしてくれるなら安心」と思うかもしれませんが、実は長期一括借り上げにはデメリットも数多く存在します。
まず、長期一括借り上げ物件の多くは、建設費に空室リスクの費用が上乗せされているケースが大半を占めます。つまり、長期一括借り上げ物件は既に市場価格よりも高値だといえるのです。
次に、家賃保証についてですが、実際にはきちんと保証はしてくれません。
契約条項を見てみると、必ず「賃料の見直し」という項目があり、そこには小さい文字で、「2年毎に見直しがあります」などと書いてあります。また、募集開始の数カ月は保証免責(保証しない)という条項を設けていたりするのです。
つまり極端な話、収支が安定しているのは最初の2年間だけで、長期一括借り上げ契約を更新するたびに、キャッシュフローが出なくなるのです。
さらに、長期一括借り上げをしている会社の指示通りのメンテナンスをしないと契約を解除するという文言も契約条項に小さく入っているケースも多いです。
そして、そもそも大手企業であっても倒産しない可能性はゼロではないので、そのリスクも考えなければなりません。
実は、国民生活センターでも「不動産サブリースの問題」として大きく取り上げられるほど、長期一括借り上げのトラブルは深刻化しています。
業者は自信を持って勧めてくるでしょうが、そのリスクについては十分に考慮する必要があるといえるでしょう。
まず大前提として、長期一括借り上げを検討する場合は、十分すぎるほど想定収支にストレスをかけて数字を出す必要があります。
そして、一括借り上げするほど空室リスクが高いのか、ということも十分に検討すべきです。エリアであれ物件であれ、空室リスクを高める要因があるのでしたら、よほど高利回りなどでなければ、そもそも購入対象から外すべきです。
最後に、長期一括借り上げを検討される際の契約書でチェックすべきポイントをまとめましたので参考にしてください。
・更新手数料や敷金の取り扱い
・一括借り上げ契約の解約条件
・賃料の見直しまでの免責期間
・退去後のリフォーム工事や定期メンテナンス費用の負担について
以上のポイントをチェックし、検討するようにしましょう。