不動産投資をはじめるとき、どうしても物件選定や融資のことで頭がいっぱいになってしまい、「出口(売却)」についての検討がおろそかになりがちです。しかし、投資の成否は売却して初めてわかるもの。
ここでは、「出口戦略」の基本的な考え方について解説していきましょう。
よく「家賃収入(インカムゲイン)こそ不動産投資の王道だ」という意見を耳にします。これはこれで間違ってはいないのですが、その投資において利確(利益確定)はあくまで売却した後の話です。
大前提の話をすると、30~35年のローンを組み、家賃収入で完済した投資家は「ゼロ」です。というのも、不動産投資が流行り始めたのは、せいぜいここ10年の話だからです(35年前というと、1983年に物件を買ったということですが、そもそもその時期にこれだけ長期のローンが組めたのか定かではありません)。
したがって、「30年間で、これだけの家賃収入が手に入ります。完済後は売却するのもいいですし、そのまま持ち続けてもいいでしょう」という説明は、経験者がゼロである以上、正確とはいえないのです。
日本では、人口減少が加速度的に進んでいます。今後は、あまりに人がいないエリアの住民を近くの都市に移住させるという取り組みが始まる可能性も十分に考えられます。そうなると、そのエリアは完全に人が住まないエリアになり、当然収益もゼロになります。
また、35年のあいだに大地震や大規模な噴火など自然災害が起こる可能性も高いです。首都圏の地下を震源とするマグニチュード7クラスの地震(首都直下地震)は、今後30年以内に70%程度の確率で起こるとされています。ほかにも、静岡県の駿河湾から四国沖に連なる南海トラフでM8~9クラスの地震が発生する確率は10年以内に「20〜30%」、50年以内では「90%程度かそれ以上」です。富士山の大噴火も「いつ起きてもおかしくない」という状況です。
完済するまでに物件および物件を取り巻く環境がどうなっているかは誰もわかりません。
したがって、出口を考えずに「ずっと持ち続ける」と思考停止になるのは非常にリスキーなのです。おおよそ5年単位で、「どれくらいで売れるのか」「売ったら最終利益はいくらになるのか」ということは考える必要があります。
それでは出口を成功させるためには、どうすればいいのでしょうか。
ポイントは主に3つあります。
・最も高く売れるタイミングで売却する
不動産は相場が大きく動きづらいのが特徴ですが、それでも「買い時・売り時」は存在します。売り時を見極めるコツの一つは、「買い手が多い時を狙う」ということです。当然のことですが、需要(買い手)が多いほど、価格を上げても売れるようになるからです。
では、需要が増えているかをどう見極めるかというと、まず金融機関の融資への姿勢です。金融機関が不動産投資に対してたくさんのお金を貸し出しているとき(つまり「私も買えた!」という人が多く出てきたとき)は、積極的な融資をしていると考えられます。また、特に金利が低い時期も同じような理由で狙い目といえます。
・ 購入前に出口を意識して買う
売れる物件は、投資家の関心が高い立地条件、物件の状態、築年数、空室率、そして利回りが良いといえます。立地や築年数など変えられないものもあれば、物件の状態や空室率はオーナーの努力で変えられるものもあります。どこを強みにして、どの層に売るのかを購入時に考えることが重要です。
・売り急がない
売り急がないといけない状況だと、買い叩かれるリスクは上がります。不動産の売却には時間を要しますので、余裕を持ったスケジュール感で出口戦略を考えていただければと思います。