海のものとも、山のものとも。

2017年 07月19日・成毛眞 投資コラム 第20回

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  • 一つの投資が次の投資の効率を高める

    歌は世に連れ世は歌に連れ、と言いますが、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)もまさに世に連れ。ミクシィ、ツイッター、リンクトイン、フェイスブック、インスタグラム、そしてマストドンと、次々に現れては消えていきます。正確に言えば消えはしないのですが、より多くの人の集まる場が移り変わっていくのです。

    私も多くのSNSに実名でアカウントを持っています。最もよく使うのはフェイスブックでしょうか。ただ、ソーシャルネットワーキング、乱暴に翻訳すると知人と交流するために使っているのではありません。目的は三つあります。

    ひとつは、仕事の連絡のため。今私は、年に何冊か本を書いているのですが、その都度、出版社や編集者が異なるので、段階のずれたプロジェクトがいくつか平行しているのが日常となっています。すると、メールでやりとりしていると、誰とどんな約束をしていたかが混乱してしまうので、プロジェクトごとにクローズドグループを作り、そこでやりとりをしています。履歴を追うのも簡単で、いつまでに原稿を渡す約束をしていたか、それを何日過ぎてしまっているかなどが、一目で分かります。大変、便利です。

  • 書き込みで仮説と検証を繰り返す

  • ふたつめは、マーケティングのためです。別の言葉を使えば、仮説と検証のためです。

    気になるニュースがあれば、私なりの解釈を述べます。時事問題とは無関係な、身の回りのことも書き込みます。それは、反応を得るためです。

    「いいね!」と言われることもあります。中には、それが本の企画になることも。新潮新書から出した『コスパ飯』という本は、薫製醤油を使った成毛流卵かけご飯(まず白身を泡立ててご飯に混ぜ込み、上にのせた黄身を割りながら食べるというものです)について書いた記事を読んだ編集者が「本にしませんか」と声をかけてきたことから生まれました。もし私がフェイスブックに卵かけご飯について書かなければ、この本は世に出ませんでした。

    反応があまりないこともありますが、それも重要な情報です。私の書き込みを見ている人は、こういったテーマにあまり関心を示さないのだということがわかるからです。関心があるのではないかという仮説が間違っていたと判断できる。これは貴重なことです。

    ひとつの検証が終わったら、次にすることは、別に立てた仮説を検証の場へ送り出すこと。これを繰り返していると、何が受けるのか、受けないのかのセオリーがある程度見えてきます。これはつまり、マーケティングということです。

  • 書けば理解の浅さがわかる

  • SNSを使う理由の最後の一つは、自分の中での思考を深められることにあります。自分では理解しているつもりでも、人に説明できないことは、実は理解できていない。世の中はそんなことだらけです。ですから私は、興味を持ったもの、面白いと思ったものが、自分なりに理解できているかどうかを確かめたくて、それを文章にするのです。

    そうしてみると、わかっていなかったということがわかることが多々あります。わかっていないことがわかったら、わかっていない部分のインプットをし直せばいい。そして再度、アウトプットに挑みます。アウトプットを続けるということは、インプットの原動力になるのです。

    ここでいうアウトプットは、投資に置き換えることができます。投資をしてみると、それまで見えていなかったものが見えてくる。可視化されたその情報は、必ずや次の投資に活かせるでしょう。

成毛 眞
(なるけ まこと)

HONZ代表。元マイクロソフト社長。インスパイア取締役ファウンダー。スルガ銀行社外取締役。早稲田大学ビジネススクール客員教授。週刊新潮、週刊東洋経済、月刊クーリエ・ジャポン日経BPネットにエッセイ連載中。産経新聞、週刊朝日などに書評定期寄稿中。代表的著書に『面白い本』(岩波新書)『大人げない大人になれ』(新潮文庫)など多数。