海のものとも、山のものとも。

2016年 12月15日・成毛眞 投資コラム 第3回

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    見つけたら株を買おう

    二十年近く前の話です。マイクロソフトで私の右腕として働いてくれていた人物が、ある日「素晴らしいイタリアンの店を見つけました。なにもかも完璧なんです」と、興奮気味に話していたことがあります。その店はピザもパスタも、またワインもどれを注文しても外れがないといいます。また、価格は高くないというよりも、安い範疇に入ります。「毎日でも通いたいと思っています」と彼がいたく気に入っていたその店の名は、サイゼリヤといいます。

    サイゼリヤとは言うまでもなく、今やすっかり有名な格安でおいしいイタリアンのチェーン店です。サイゼリヤが50号店を出店したのは1992年、100号店を出店したのは1994年、500号店を出店したのは2001年で、2年かけて50店舗増やしたかと思うと、その後6年間で400店舗増やしたのですから、1994年ごろから急成長を遂げたとみていいでしょう。

  • ユニクロでフリースだけを買うべきではなかった

  • 彼の話を聞いていた当時、私は「へえ、そんなイタリアンの店ができたんだ」と聞き流していただけでした。つまり、私は、それから彼もミスをしたのです。私はそのサイゼリヤの良さを試してみるべきでしたし、彼はそこまで惚れたサイゼリヤが、1998年にジャスダックに上場したときには、その株を買うべきでした。その後サイゼリヤは、東証2部に上場し、私がマイクロソフトを辞めた2000年には東証1部に指定替えしています。ジャスダックの頃に株を買っていたら、今頃、一体どうなっていたでしょうか。

    サイゼリヤがジャスダックに上場した年、東京にあるアパレルの店がオープンしました。ユニクロです。それまでは郊外のロードサイドなどに出店していたユニクロが、ついに東京・原宿に店を出し、ちょっとした社会現象になりました。待ちに待ったユニクロが東京へやってくるというので、列に並んでフリースを買ったという人もいるかもしれません。

    その人は、私の右腕と同じミスをしました。買うべきなのはフリースだけではなく、多くの人に魅力的だと感じさせる商品をつくり、売っているファーストリテイリングという会社の株でした。その後のユニクロブランドの拡大については、説明するまでもないでしょう。

  • 投資先選びで頼りになるのは自分のアンテナ

  • 私は投資コンサルティング会社の創業者でもあるので「投資先はどう決めたらいいでしょうか」と聞かれることがたびたびあります。答えはいつも決まっています。「自分が良いと思う商品を売っている会社、好きな会社を支える」です。商品を自分の目で見て、舌で味わって「これは良い」と心から思えるものがあったら、その商品だけでなく、会社の株も迷わず「買い」です。その企業の経営状態など、チェックする必要はありません。それだけ良いものを作れる会社なら、たくさんの人が必ず支持します。つまり、伸びていきます。

    さて問題は、良い商品、良い会社にどうやって出会うかですが、これは街を歩くしかありません。どんな街でも、少しずつ変わっています。何かがなくなり、何かが生まれています。その変化の中に、うってつけの投資先があります。その投資先の何に反応するのかは、個々人のアンテナ次第です。

    裏を返すと、投資でやってはいけないのは、専門誌やアドバイザーのいうことを鵜呑みにすること。他人の言葉よりも自分の感性を信じることが、投資で勝つコツです。ですから私もできるだけ、外に出るようにしています

成毛 眞
(なるけ まこと)

HONZ代表。元マイクロソフト社長。インスパイア取締役ファウンダー。スルガ銀行社外取締役。早稲田大学ビジネススクール客員教授。週刊新潮、週刊東洋経済、月刊クーリエ・ジャポン日経BPネットにエッセイ連載中。産経新聞、週刊朝日などに書評定期寄稿中。代表的著書に『面白い本』(岩波新書)『大人げない大人になれ』(新潮文庫)など多数。