海のものとも、山のものとも。

2016年 11月29日・成毛眞 投資コラム 第2回

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  • 私が田園調布に住まず
    軽井沢に別荘を買わない理由

    前回書いた通り、私は2000年にマイクロソフトの社長を辞めました。ちなみに、今は知りませんが、当時のマイクロソフトの社長の給料は、さほど高いものではありませんでした。ただ、毎日、仕事ばかりしていたので、お金を使う機会があまりなく、辞めたときにそれなりの金額を持っていました。

    ですから、80年代に星セント・ルイスが持ちネタにしていたように「田園調布に家が建つ」ようにすることも、やろうと思えばできなくはありませんでしたし、メルセデスベンツに乗ることもできましたし、政財界の大物が避暑地として選ぶ軽井沢に別荘を持つことも、、やろうと思えばできました。しかし、どれもしませんでした。

    今、自宅は杉並区内の、京王井の頭線沿線にあります。車はベンツではありません。別荘は山中湖の近くに持っています。

  • 消費財は買ったときが最高値

  • ちなみに、好きな服のブランドは、肩の力の抜けたパパス。夏はここのアロハと決めています。アロハでははばかられるような少しかしこまった場には、価格がリーズナブルなので若いビジネスマンに好まれる鎌倉シャツのワイシャツを着ていきます。ご存じの方も多いと思いますが、パパスも鎌倉シャツも、着心地がいい一方で、ものすごい高級ブランドというわけではありません。

    つまり私は、家や車、服にはナンバー1ではなく、かといってものすごくチープなものでもなく、ナンバー2くらいのものを選んできたことになります。

    家や車、服は消費財です。家については投資対象としての一面もあるので、詳しくは別の機会に書くつもりですが、少なくとも車や服は、買ったときより価値が上がることがありません。もちろん、ビンテージ化する車や服もありますが、私は車や服にはそういった可能性よりも、乗ったり着たりという本来の機能を求めます。ですから、投資対象にはなり得ないのです。ナンバー2で十分なのは、それが理由です。

    消費するものはナンバー2以下とする。こう決めると、ナンバー1を消費する場合と比べると、当然のことながら、出費を抑えることができます。

  • ナンバー1を避けると資金と目標が手元に残る

  • では、その差額を何に使うかというと、投資です。投資というとまっさきに頭に浮かぶのはベンチャーへ投資やマンション投資などですが、自分の人生を豊かにする「経験を買う」ことも立派な投資です。

    また、ナンバー1を手に入れないことのメリットは、差額が手元に残ることだけではありません。「いつかナンバー1を手に入れよう」という目標さえも、残すことができます。

    若くしてナンバー1を手に入れてしまうと、それ以上のゴールがなく、燃え尽きてしまいます。人生は思っているよりもずっと長いので、ナンバー1という生涯をかけてたどりつくゴールには、やすやすとたどり着かない方がいいのです。

    では、私もいつかは田園調布に家を持ち、ベンツに乗り、軽井沢に別荘を持つかというと、今の時点では想像できません。まだまだ自分は若いと思っているからでしょう。

成毛 眞
(なるけ まこと)

HONZ代表。元マイクロソフト社長。インスパイア取締役ファウンダー。スルガ銀行社外取締役。早稲田大学ビジネススクール客員教授。週刊新潮、週刊東洋経済、月刊クーリエ・ジャポン日経BPネットにエッセイ連載中。産経新聞、週刊朝日などに書評定期寄稿中。代表的著書に『面白い本』(岩波新書)『大人げない大人になれ』(新潮文庫)など多数。