海のものとも、山のものとも。

2017年 01月10日・成毛眞 投資コラム 第7回

  • いいね!
  • ツイート
  • 人工知能時代だからこそ
    若い人には盆栽をすすめたい

    かつて「いつやるの? 今でしょ」と言った予備校講師がいましたが、これは受験勉強だけでなく、ものごと全般に言えること。少しでもぴんとくるものがあったなら、すぐに始めるべきです。

    特に趣味はそうです。趣味は時間と金を奪うもので無趣味こそが素晴らしいと考える人もいるようですが、無趣味な人に粋な人はいませんし、そこで節約した時間とお金を何に使うのかも私には疑問です。いっそ思い切り趣味に投資をした方が、大きなリターンを得られるもの。最近の世の中はそのようにできています。

    趣味にも色々ありますが、できるだけ早く始めた方がいい趣味の最たるものは、蓄積がものをいう種類のものです。

  • 年月が経つと価値が上がる趣味がある

  • たとえばウイスキーには10年ものとか12年もの、あるいは35年ものなどというものがあり、同じ銘柄ならば古いものほど価値があるとされています。ワインは葡萄のできに左右される面が多いとは言え、傾向としては同様です。こういったウイスキーやワインをつくることは、10年後12年後35年後の市場価値を考えた、かなり息の長い投資です。すぐにお金にしたい人、飽きっぽい人はこのビジネスに向いていません。

    日本では趣味でウイスキーやワインをつくることはできませんが、しかし、遠い将来の価値を見越して趣味に取り組む、つまり、遊ぶ、ということはできます。

    盆栽はそのいい例です。盆栽というと、サザエさんの波平の趣味であり、したがって年配者の趣味という印象がありますが、若い人こそこれに取り組むべきだと私は思います。なぜなら、この先何年も続けて楽しめる趣味だからです。

    そして、30年、40年と育てた盆栽は市場価値が高まりますから、売ればそこそこのお小遣いになりますし、仮に売却しなくても、買って育て始めたときとは桁違いの価値をもつ盆栽が手元にあるということは密かな喜びになることでしょう。なぜこのことに若い頃に気づかなかったのか、残念でなりません。すでに盆栽を始めている先輩方には感服いたします。ガーデニングやプランター農園を趣味にしている若い人がいるなら、ぜひそこに盆栽も付け加えてほしいと思います。

  • 休むことを恐れずに始めよう

  • ほかにも、若いうちに基礎をたたき込んでおいた方がいい趣味があります。たとえば乗馬やスキューバダイビングがそれです。これらは、自転車や水泳と同じで、年を取ってからいきなり始めるとなるとハードルはかなり高くなりますが、若い頃に何度か経験があり、
    それを再開するとなると、思いのほかスムーズに入り込めます。初めて取り組むのとはまるで違います。

    年を取ったことを怖がる必要はありません。休んでいる間に、教え方や器具は洗練されているのでむしろ「あれ、こんなに簡単だったっけ」と拍子抜けすることでしょう。ですから、始めたことを途中で休むことを恐れたり恥じたりする必要はありません。再開のために休むと思えばいいのです。

    どんなに人工知能が発達しても、瞬発力のあるロボットができても、時間のコントロールはできません。したがって、時間をかけないと得られないもの、若いうちにしか身につけられない経験の価値は、今後ますます、相対的に上がっていきます。だからといって骨董をつくりだそう、一生ものの趣味を身につけようと構えると気疲れしますから、ミーハーな気持ちでやってみるのが一番だと思います。

成毛 眞
(なるけ まこと)

HONZ代表。元マイクロソフト社長。インスパイア取締役ファウンダー。スルガ銀行社外取締役。早稲田大学ビジネススクール客員教授。週刊新潮、週刊東洋経済、月刊クーリエ・ジャポン日経BPネットにエッセイ連載中。産経新聞、週刊朝日などに書評定期寄稿中。代表的著書に『面白い本』(岩波新書)『大人げない大人になれ』(新潮文庫)など多数。