海のものとも、山のものとも。

2017年 03月01日・成毛眞 投資コラム 第10回

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  • 手のひらで激しい進化を感じられる
    ツール、カメラ

    男性であればオーディオ・カメラ・時計。このうちのどれか、あるいは2つ、いやいやすべてに関心があるという人も多いでしょう。どれにも興味がないという人を、私はほとんど知りません。

    ただし、オーディオマニア同士が必ず意気投合できるかというと、そんなことはありません。オーディオマニア党には音楽鑑賞派とオーディオ機器派という二大派閥があり、互いの価値基準は相容れることなく、話し合いは平行線に終わることが珍しくありません。彼らが一致団結するのは、そこにカメラ党や時計党という敵対勢力がいるときくらいです。

    私はオーディオ党ではオーディオ機器派に属しますが、最近は回路や基盤も進化し、また価格も落ち着いてきたため、安いものでも充分かなと思うようになりました。もっともこの傍流の意見を、オーディオ党ではオーディオ機器派本流は良しとしないかもしれませんが。

    時計に関しても、トゥールビヨンの技術が進化し、つまり低価格化が始まったので、私の機械式腕時計への関心は、かつてほどではありません。デジタル表示にニキシー管をつかったもの、または針の液体をつかったアナログ時計などには興味があるものの、機械時計という技術の追究は、もう一段落がついたように感じています。もちろんこれについても、時計党機械時計原理派の方からは異論があるでしょう。

  • 進化を実感するから先を想像できる

  • 私が今でも強い関心を持っているのは、カメラです。カメラ党も撮影派と機器派に別れており、私は、撮影に関しては10代の頃に熱中していましたが、今は機器派の末席を汚しています。

    今でもカメラは大きく急速な進化の過程にあります。この20年ほどを振り返ってみても、銀塩カメラ(フィルムを使うタイプ、念のため)があり、それがCCDやCMOSを撮像素子とするデジカメに替わり、今ではそのデジカメで動画も撮れるばかりでなく、360度全天球対応、超小型完全防水など、これまでの不可能をすべて可能にする勢いで進化しています。

    カメラに注目し、その進化を知ることはまさに世の中変化を知ることです。見るだけでなく使ってみれば、手のひらで進化を実感できます。こういった実感をしなくては、これから先の変化など、想像も出来ないと私は思います。それを言い訳に、かなりの数のカメラを手にしてきました。

    といった話をすると「じゃ、成毛さんは日頃はどんなカメラを使っているの」と聞かれることもありますが、まずはiPhoneのカメラだと答えます。スマホ付属のものとは思えないほどのクオリティで、きれいに撮れます。

    スマホ以外で、でかけるときにわざわざカメラを持ち出すとなったら、最近は『ライカQ』ばかりです。

  • クルマと比べるとかなりリーズナブル

  • 銀塩でも、スナップカメラの最高峰とも呼ばれる、28ミリ単焦点のレンズを付けた『ライカM6』を持っていましたが、それを使い出した頃の感動が、ライカQでも味わえるのです。スペックを比較すれば、画素数の多い撮像素子を搭載したプロ用一眼レフには敵わないでしょうが、とにかく、心に訴えるような絵が、プロカメラマンのような細かな設定なしでも、実にきれいに撮れる。そうそう、こういう風に撮りたかったんだという、理想の写真が撮れるのです。

    ですから、散策ついでに写真を撮るのが趣味という人には、いささか値が張りますが、ライカQをお薦めします。値が張ると言っても、クルマほどではありません。クルマも進化を実感させてくれるプロダクトですが、リーズナブルさではカメラに軍配が上がります。収納場所もさほど気にすることはありません。なにしろ、このカメラを首から下げて鏡の前に立つと、目の前に立派な紳士がいるように見えるのです。これも立派な自分への投資だと思ってます。

成毛 眞
(なるけ まこと)

HONZ代表。元マイクロソフト社長。インスパイア取締役ファウンダー。スルガ銀行社外取締役。早稲田大学ビジネススクール客員教授。週刊新潮、週刊東洋経済、月刊クーリエ・ジャポン日経BPネットにエッセイ連載中。産経新聞、週刊朝日などに書評定期寄稿中。代表的著書に『面白い本』(岩波新書)『大人げない大人になれ』(新潮文庫)など多数。