海のものとも、山のものとも。

2017年 04月12日・成毛眞 投資コラム 第13回

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  • 録画したテレビ番組を流しながら本を読む理由

    私は以前『本は10冊同時に読め!』という本を書いたことがあります。文字通り、本を10冊同時に読むと効率だけでなく、頭の中でいろいろな反応が起こり、発想が豊かになるのではないかと思っているのです。

    10冊同時にといっても、10冊を同時に広げ、並べ、たとえば1ページずつ読み進むわけではありません。今日はこの本、明日はその本といった具合に、一冊を読み終えるのを待たず、複数の本を併読するという意味です。すると、たとえば江戸時代の食とトンネル工事技術が、ベトナム・ハノイの街並みと人工知能が、頭の中で結びつくことがあります。いつもというわけではありません。たまにです。しかし、そのたまに起こる、今時の言い方をするとケミストリーは、私の頭の中でしか起こらないことなので、そこから、他の人にはないアイデアや視点を得ることができます。

    テレビを見るときも、できるだけ10番組同時に見るようにしたいと考えています。もちろん、テレビを10台並べて視聴するという意味ではありません。何の脈絡もなさそうな番組を、続けて見るという意味です。

  • テレビは1.3倍速で十分理解できる

  • ところで、最近、テレビはご覧になっていますか。くだらない番組が多いからテレビは見ないという方もいると思いますが、しかし、多くのつまらない番組の中に、わずかではありますが、面白い番組が隠れています。ですから私は、面白い番組は録画し、リモコンで操作して1.3倍速で見るようにしています。リアルタイムではつまらない番組しか放送していないことがありますし、1.3倍速にできないからです。1.3倍速にするのは、いわゆる速読と同じです。これくらいならしっかり番組の内容を理解できます。

    テレビの前に腰を据えてじっくりと見ることはほとんどありません。他のことをしながら、BGM代わりに録画を流しています。

    そうしていても、ふっと耳に飛び込んでくるキーワードがあります。そうしたら巻き戻して、それが何だったか、なぜそのキーワードが出てきたのかを確かめます。一つの番組で、一つでもキーワードが見つかれば御の字です。見つからなくても雑談のネタは充分に仕入れられるので良しとします。

    なによりも重要なことは、手元にパソコンかスマホを置いてテレビを見ることです。テレビを見ていて気になった話題やキーワードが出てきたら、即調べてみることです。Wikipediaにあたるだけでも十分です。テレビ視聴はそもそも受動的なので、少しの能動的なアクションをいれることで、まったく別のものになるはずです。

  • バラバラのキーワードがつながる瞬間を待つ

  • さて、そうやって得たキーワードをどう使うかというと、やはり新しいアイデアや視点を得るために使います。ダークマター、魚の活け締め、シェアハウス、ABC検診、ビットコイン、都々逸などなど、私の頭の中でしか横並びになりそうにない言葉があると、そこから、他の人には思いつけないアイデア、得られない視点が見つかるのです。それが新たな投資先に繋がることも、ゼロではありません。

    もしも、読む本が1冊だけだとしたら、また、見る番組が一つだけだとしたら、掛け合わせの効果は生まれず、そこから得られるものは、他の人が得られるものと同じです。差をつけたければ、何かほかのものと組み合わせるしかないのです。それも、できるだけ他の人が、組み合わせそうにないものと、です。ですから私は、テレビを見ない人が増えているからこそ、逆張りで見るべきだと思いますし、有料放送に加入して、周りでは誰も見ていないような番組を探すべきだと思います。

    投資には逆張りという言葉があります。大衆がどこかに向かっているときに、その逆を行くというのは勇気がいることかもしれません。しかし、大勢の若者がスマホに向かうなら、こちらはテレビで逆張り、大勢の中高年がアウトドアに向かうなら、こちらはインドアで逆張りなどという天邪鬼な生き方も、ひとつの投資のありかただと思っているのです。

成毛 眞
(なるけ まこと)

HONZ代表。元マイクロソフト社長。インスパイア取締役ファウンダー。スルガ銀行社外取締役。早稲田大学ビジネススクール客員教授。週刊新潮、週刊東洋経済、月刊クーリエ・ジャポン日経BPネットにエッセイ連載中。産経新聞、週刊朝日などに書評定期寄稿中。代表的著書に『面白い本』(岩波新書)『大人げない大人になれ』(新潮文庫)など多数。