海のものとも、山のものとも。

2017年 05月10日・成毛眞 投資コラム 第15回

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  • 株とワイシャツと下着

    株には長期ホルダーもいれば、短期間のうちに買っては売り、売っては買いを繰り返すデイトレーダーもいます。だからこそ株式市場は面白いのですが、中には、ある株はずっと持ち続け、それ以外の株は頻繁に取引するという人もいるでしょう。端から見るとその行動は一貫していないようにも見えますが、本人の中には確固たるルールがあるのだと思います。

    話は変わりますが、私の下着は、かなり手ごろな価格のものです。かつてフリースで一旗揚げた、日本で一二を争う著名なブランドのものを愛用しています。その代わり、その循環は非常に早い。たとえば靴下は、穴が開く前、「ちょっとへたってきたな」と感じたら、新しいものに交換することにしています。足元の清潔さを保つ私なりの工夫です。ただ、少しへたった靴下はすぐに捨てるかというと、そんなことはありません。大事に保管しておきます。自宅には、古くなった靴下を保管するための箱があるくらいです。

    旅行へ行くときには、この箱から靴下を取り出し、鞄に詰めます。そして、旅先で最後の役割を果たしてもらい、その場で処分するのです。すると、帰りの鞄には、靴下が入っていたスペースにお土産を入れることができます。靴下だけでなく、下着はすべて、そうやって使い尽くしています。

  • くたくたになってからがパジャマの真骨頂

  • 一方で、くたくたになってもなお、使い続けるものもあります。それは、パジャマです。私は寝るときにはパジャマを着ます。当たり前のことのように思われるかも知れませんが、最近は、Tシャツやスウェット、ジャージなどをパジャマ代わりにする人も増えているようなので、パジャマ派であることをお断りする次第です。しかも素材はネルの一択です。

    パジャマはもともと肌触りを優先して選びますが、パジャマというものは、着続ければ着続けるほど、くたっとして肌になじむようになります。こうなってからが、そのパジャマの実力が発揮されると言ってもいいでしょう。新しいパジャマを選ぶときは、どんな風にこなれていくかを想像するのが楽しくて仕方ありません。くたっとしすぎても、気にすることはありません。寝室で着るものですから、人の目には触れないからです。

    タオルについても同じです。選択に選択を重ね、柔らかくなり吸水力が上がってからが勝負です。なお、タオルは毛足の長いダブルパイルではなく、シングルパイルが私の好みです。

    シーツには糊をつけません。つける人の気が知れないと申し上げたいほどです。ですから、ホテルで連泊するときには、シーツの交換は断固拒否します。私は柔らかいシーツで寝たいのです。

  • 傷む部分だけを取り替えて長く愛用する

  • ワイシャツも、着れば着るほど肌になじみます。ただ問題は、襟と袖口が汚れたりすり切れたりすること。なので、身頃と袖はそのままに、襟と袖口だけを交換して着続けたこともあります。交換にはそれなりに費用がかかりますが、着心地の良さには換えられません。それに、好きな靴のソールを張り替えて履き続けるのに似て、ちょっと粋ではないでしょうか。

    さて、このあたりで「では、なぜ下着だけくたっとした頃に換えるのか」「下着だって人から見えないのだから、頻繁に換えることはないではないか」と思われる方もいるかも知れません。それに私は反論できません。ただ「それが私の好みであり、流儀なのです」と申し上げるほかはないのです。

    私の株式投資も同様です。好きな製品を作っている会社の株式を少しだけ長期に保有するのです。ときには会社がクタクタになることもあるかもしれません。しかし、その会社の業績などを眺めながら、あらためて世の中のことを見てみると、違った風景が見えてくるように思うのです。なぜか自分も頑張らなければなあと勇気づけられることあると思うのです。

成毛 眞
(なるけ まこと)

HONZ代表。元マイクロソフト社長。インスパイア取締役ファウンダー。スルガ銀行社外取締役。早稲田大学ビジネススクール客員教授。週刊新潮、週刊東洋経済、月刊クーリエ・ジャポン日経BPネットにエッセイ連載中。産経新聞、週刊朝日などに書評定期寄稿中。代表的著書に『面白い本』(岩波新書)『大人げない大人になれ』(新潮文庫)など多数。