海のものとも、山のものとも。

2017年 05月24日・成毛眞 投資コラム 第16回

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  • 私が定番の贈り物をしない理由

    Facebookを使っている方はよくご存じだと思いますが、自分がフォローしている人の誕生日になると、「今日は○○さんの誕生日なので、お祝いしましょう」といったメッセージが自動的に表示されます。そして、その言葉にうながされるように多くの人がお祝いコメントを書き込みます。

    私はこういったお祝いコメントを書くことはありません。書かれるのも好きではありません。なので、Facebookでは誕生日を非公開にしています。なぜなら、誕生日は本人の意志とは無関係に決められた記念日ですし、指一本で祝っていただくのも居心地が悪いのです。祝ってもらうなら、毎年かならずやってくる誕生日よりも、なにかの特別なきっかけが欲しいのです。

    たとえば、新しく出版した本に重版がかかった。『重版出来!』というドラマのおかげで重版という言葉は以前より広まりましたが、つまりこれは、出版した本が市場で足りなくなり、アンコールがかかるということ。追加発売の意味です。ちなみに出来は"しゅったい"と読むことを、このドラマが放送されるまで出版業界でも多くの人が知りませんでした。ともあれ、新刊の発売当日、翌日などに重版が決まると実に嬉しいものです。これは出版社の編集者と努力した結果の慶事なので、盛大に祝いたいできごとです。

  • 贈るならシェアしやすいもの

  • また、何もないような日にあえて特別なことをすることも好みます。たとえば、誕生日などの記念日ではない、普通の日に突然プレゼントを贈るのが好きです。誕生日プレゼントとして贈ると、押し寄せる誕生日プレゼントのうちのひとつにしかカウントされませんが、普通の日のプレゼントは、強く印象に残してもらえるだろうとも考えるからです。

    つきあいの長い週刊誌の編集部へは、これもまた特に何の意味もない日に、栄養ドリンクを箱ごと届けたり、編集部員の数を遥かに超えた数のいなり寿司を届けたりしています。細かなものを大量に贈るのは、いわば贈り物を受け取る受益者が多くなり、その結果としてSNSなどでシェアしてもらいやすいからです。

    以前、新社屋へ引っ越した会社に花を贈ったことがあります。そのとき私は社長だったので、自分のポリシーよりお付き合いを優先させました。ただ、転居祝いというと鉢植えの白い胡蝶蘭が定番ですが、私が選んだのは赤いバラ。先方の社員数のバラを花束にして届けてもらいました。なぜかというと、これもシェアしてもらいやすいから。社長室の隅に飾られるより、多くの社員の家庭に持ち帰られるバラの方が、広くお祝いの気持ちが伝わると考えました。

  • 定番に頼ると「自分なり」は見つからない

  • 私は、旅行もトップシーズンにするタイプではありません。どうしてもその時期でないとならない旅先(伊勢神宮方法全国花火大会とか、蟹漁解禁期間の北陸とか)を除いては、あえて混雑する時期を外し、その時期ならではの楽しみ方を探します。

    すると、観光地へ行っても、ガイドブックに載っているような風景は見られないことがありますが、それがいいのです。写真でよく見る景色と実際のものとを比較すること、どこがどう異なっているかを知ることは、世の中には不変のものなどないのだということを知ることです。この視点がないと、ほかの人には見つけられないいいものを探し出すことはできないと思っています。

    贈り物にしても旅先にしても、あえて定番を避けて、少しだけオリジナリティを求める。ひいてはそれが自分なりの投資先を見つけるコツではないでしょうか。いわば逆張りの思想なのです。などと言い訳をしながら、私は今日もアマゾンのサイトを覗き、何か面白そうなものないか、誰かに贈る前に自分で試した方がいいものはないかと、物色するのです。

成毛 眞
(なるけ まこと)

HONZ代表。元マイクロソフト社長。インスパイア取締役ファウンダー。スルガ銀行社外取締役。早稲田大学ビジネススクール客員教授。週刊新潮、週刊東洋経済、月刊クーリエ・ジャポン日経BPネットにエッセイ連載中。産経新聞、週刊朝日などに書評定期寄稿中。代表的著書に『面白い本』(岩波新書)『大人げない大人になれ』(新潮文庫)など多数。