2015年に開通した北陸新幹線「2つの新駅」の影響は?現役の不動産投資が読む、今後10年の富山県の人口増減と土地開発

2015年07月18日・プレミアムバリューバンク

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  • 2015年3月14日、北陸新幹線が開業し、北陸地方が関東からと関西からと双方向に結ばれ、これまで約4時間近くかかっていた東京-金沢間が最短2時間半に、富山と東京が最短2時間8分で直結しました。

    これにより首都圏と北陸地域の移動時間が大幅に短縮しました。新幹線開業で観光資源のみならず、街の活気にも注目が集まりまっています。そこで、今回は、現役の不動産投資家に、北陸新幹線が開通したことで注目されている、富山県の人口増減と土地開発に関する分析を行っていただきました。

  • 交通基盤が整備され、東京圏からの観光客、企業拠点が増加

  • 2015年1月1日時点で17.1%と商業地で全国1位の上昇率となった金沢駅周辺の分譲マンションはその人気や、価格の上昇が顕著でした。北陸新幹線の富山県における新駅は黒部宇奈月温泉と、新高岡駅ですが、高岡市は金沢と和倉温泉の中間地点にあり、金沢にも行きやすい、観光立地です。

    また、富山県内で世界遺産に登録された五箇山の合掌造りの集落は、高山で有名な飛騨地方にも近く、宇奈月温泉などの温泉などとともに観光名所となっています。富山湾の宝石白エビ、ベニズワイガニなど食べ物もおいしく、黒部アルペンルートは美しい景色で知られる北アルプス山岳リゾートです。

    トロッコ電車のある黒部峡谷は、富山県による新幹線意識調査で、金沢の兼六園に勝るとも劣らない人気があります。今後はアジア系などインバウンド観光も引きつけることも考えられます。

    これまでは関西圏とのつながりの方が強かったこの地域で、新幹線開通で、企業同士のつながりや人の移動の増加などが期待されています。富山県は災害に強いことに加え家の広さは有名で県民の幸福度ランキングでは上位を占め、農業や漁業も盛んです。

    すでに新駅の開業にともない中心部を取り巻く幹線道路網やこれからの交通基盤が整備され、東京圏からの観光客、ビジネス客、企業の拠点増加などのさまざまな効果が現れ、地価上昇にもその影響が見られます。2015年以降の経済動向、不動産マーケットはどうなるのでしょうか。

  • 富山駅周辺の商業地では再開発が活発化して地価を押上げ

  • 関東からの時間短縮によって、今後は観光だけでなくビジネスで訪れる人口が増えると考えられます。

    富山県の入込数(来訪者数)に関しては、大和総研「地域旅客流動調査」「人口推計」によれば、2012年度には関西から59万人、東京圏から55万人、中京圏から18万人以上の観光客やビジネス入込(訪問)客を集めていましたが、今後、観光23.3% ビジネス21.6%の増加が予想されています。

    富山県の企業にとっても首都圏は日帰り圏域、営業圏となり交流を拡大しやすく、ビジネスチャンスが増えます。しかし関東地方との所要時間が著しく短縮されたことにより、地方事務所を廃止するなどいわゆる「ストロー効果」も一部で心配されています。

    日本政策投資銀行によると、富山県が公表している観光消費単価38,839円と観光庁調査による全国平均のビジネス客消費単価14,622円にもとづき、北陸新幹線開業による経済効果は観光で41億円、ビジネスで約16億円合計57億円と試算されています。訪問者人口増がもたらす富山県内で消費される原材料生産効果、生産雇用者所得増や雇用者消費による経済波及効果は、年間88億円と予想されています。

    北陸新幹線開通によって、関東の企業にとって富山県の魅力はアップしているようです。たとえばYKKグループの子会社であるYKKAPはこれまでも黒部市を生産拠点としてきましたが、東京のYKK本社も、一部を富山県黒部市に移転し、そのため230人の社員が移動すると発表しました。

    ハンドクリームで有名なユースキン製薬も、富山県八尾市に生産事業拠点を、関東から富山市に移すとしています。その他医療器械の日機装も、工場や本社機能を北陸新幹線開業したきっかけに、富山県だけでなく石川県にも移すことが決定しています。

    富山県の小売店販売額は前年同月+2,4%と伸び、(2014年経済産業省・商業勤態統計)有効求人倍率は1.39倍(平成 26年11月)と、東京都や愛知県などに次ぎトップ10に入っています。石川県1.40倍に並び、全国平均1.11を上回っています。これは富山県の企業の投資意欲が旺盛であることに加え、労働人口が少子高齢化の影響で減っているからです。富山県の人口は1998(平成10)年を境に減少に転じ、高岡市、黒部市も人口は減少し続けている一方で、世帯数は横ばいか増えています。

    石川県金沢駅西側の商業地調査地点の上昇率が全国1位の17.1%であることと比較すると小幅ですが、富山市内でもっとも高い地価となった桜町2丁目は7.8%上昇しました。全国平均で地価の下降しているのと反対に富山市は北陸新幹線開業の影響で全地点平均地価が上昇(0.2%、住宅地)、(平成27年富山県庁地価公示の概要による)地価上昇が認められた調査地点の数は70%以上で、昨年から倍増しました。高岡市でもとくに住環境と利便性がすぐれている高岡駅南側で上昇が見られます。

    上昇傾向は商業地ではより顕著で、とくに富山駅周辺の商業地では再開発が活発化して地価を押上げ、新高岡駅と高岡駅にはさまれた地点などを中心に上昇率は0.6%、約80%(調査地数中)が上昇か横ばいとなっています。富山県全体ではわずかに(0.2%)地価は下落しました。地方圏全体平均1.2%減と比較すれば、北陸新幹線開通の影響が大きいことは明らかです。

  • 富山市内で地価上昇したエリア

  • それでは富山市内で地価上昇した、マーケットで人気エリアはどこなのでしょうか。住宅地ではJR富山駅近辺等の市内軌道沿線に人気が高く、商業地では富山駅周辺や市電環状線(セントラム)沿線や、高岡駅と新高岡駅の間の駅南地区の需要が堅調です。

    しかし、県全体では毎年下落傾向が続いており、富山市内の住宅地では3.2%下落するエリアもあるので、細かなエリア分析や賃貸需要について不動産業者に複数ヒアリングするなどの下調べが必須です。観光を兼ねて北陸新幹線を使って世界遺産の五箇山やアルペンルートの夏を楽しみながら、投資エリアを見極めてみてはどうでしょうか。

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