2014年の商業用不動産に対する投資額は4兆7,000億円と、2012年の2倍以上に増加し、市場は活気付いています。(ジョーンズ ラング ラサール社調べ)
盛況な市場に刺激を受け、新たな不動産投資を検討されている方も多いと思いますが、実際に不動産を所有すると、さまざまなリスクに対処しなければいけないのも事実です。
その中でも特に厄介なのが、入居者とのトラブルです。
一度人間関係が崩れると、多額の訴訟や裁判にまで発展するケースもあり、冷静で慎重な対応が求められると言っても過言ではないでしょう。
今回は、一度巻き込まれると厄介なことも多い不動産賃貸で、入居者とのトラブルを避けるための方法をご紹介します。
もし、不動産への投資を検討されているようでしたら、購入前にご参考にされてみてはいかがでしょうか?
不動産賃貸で多いのが、入居者との金銭に関するトラブルです。
面倒な事態を避けるために、入居者との賃貸契約の際にあらかじめトラブルを想定した契約書面を作っておきましょう。
不動産賃貸におけるオーナーと入居者との関係は「借地借家法」という法律で決められていますが、オーナーよりも借主が保護される傾向があるので、オーナーが泣き寝入りしないためにも、事前の契約書面作りは重要です。
下記のポイントに気を付けて契約書を作成し、契約時にきちんと入居希望者の同意や確認を取るようにしましょう。
建物の入居時に支払うことになる「敷金」や「礼金」。特に「敷金」は賃貸借契約が終わった後に借主に返還されますが、返還額についてのトラブルは後を絶ちません。
2015年の1月から10月30日までの間に国民生活センターに寄せられた
「敷金」に関するトラブルは7760件で、昨年の7459件からわずかに増加しています。
相談内容は多岐に渡りますが、国民生活センターに寄せられた「最近の相談内容」として、下記の事例が掲載されています。
敷金トラブルの主な相談内容
・賃貸契約終了後、戻ってくる敷金が少なかった
・賃貸契約終了後に敷金を返してもらえない
・カーペットにカビがあり、住める状態ではない
・入居前からあった壁の傷の補修費用を請求された
・退去の時に、高額な修理費用を請求された参考:国民生活センターホームページより
(http://www.kokusen.go.jp/soudan_topics/data/chintai.html)
契約終了時のトラブルを防ぐために、どのように場合に敷金から差し引かれるのかをきちんと契約書に書いて、おくようにしましょう。
賃貸借は基本的に借主が保護されるケースが多いですが、借主の家賃不払いなどの「債務不履行」があった場合には、貸主(オーナー)側からの解除が認められています。
オーナー側から契約解除する場合には「催告」(相手に支払いを請求すること)が必要なので、もし迅速に手続きを進めたい場合には「無催告解除の特約」を契約書に組み込んでおくようにしましょう。
借主の何らかの事情によってオーナーが損害を受けた場合には、損害賠償を請求できます。あらかじめ契約書に損害賠償の内容、額面を記載しておけば、もしトラブルがあった場合でもスムーズに話が進みます。
保証契約は原則、書面で行わなければならないものとされています。万が一、オーナーは借主が家賃を支払えなくなった際には、保証人に代金を請求できますが、スムーズに支払に応じてもらえるとは限りません。
支払いの意思がないにも関わらず、軽率な気持ちで保証人になってしまっているケースもあるので、入居者、保証人の双方に対して契約について確認しておくようにしましょう。
多くの人が居住する不動産のオーナーになると、利用者や管理会社とのトラブルに巻き込まれてしまうこともあります。
トラブルは最悪の場合、利用者の退去や家賃収入の減少につながるケースもあるので、収益を減らさないためにもきちんと対策をしておくことが必要です。
ペット禁止の物件でありながら、入居者が隠れてペットを飼っていることが発覚し、住民同士のトラブルに発展することがあります。
住民同士の話し合いだけで問題が解決されれば良いですが、入居者に苦情を言われ、問題への迅速な対応を求められることもあるでしょう。
話し合いを迅速に進めるためにも、「契約書面にペット禁止条項」とそれを守らない場合の措置を契約書に書いておくようにしましょう。
しかし「ペット禁止条項」は、熱帯魚のような周辺の住民環境にほとんど影響を与えないものに対しては適用できないので、注意が必要です。
壁の傷、雨漏り、鍵の不具合、エアコンの不調といった物件の不具合に関する
入居者からの苦情は、不動産のオーナーになると対応する可能性が高いトラブルといえるでしょう。
実際、財団法人不動産適正取引推進機構が2012年に調査した「賃貸住宅に入居して困ったこと」では、「物件の不具合・修繕」が13.5%で一番多かったというデータもあります。
室内ある付属施設の不具合は、原則は物件のオーナーが整備しなければならないものとされていますが、借り手に故意や過失があった場合にはその限りではありません。
誰が対応し、費用を出すかについては、トラブルに発展しやすいので契約書に詳細に記載するなどの方法で未然に防ぐようにしましょう。
多くの人が住むマンションやアパートでは、生活音が住民同士のトラブルに発展することがあります。
簡単な注意や話し合いで解決すればいいですが、過去には騒音トラブルが殺人事件に発展したケースもあり、慎重な対処が求められる場面もあるでしょう。
現在、生活の騒音を規制する法律はないため、原則当事者の話し合いによって決められることになっています。そのため、騒音問題はオーナーや管理会社が対応しなければならない点も多いトラブルと言えるでしょう。
まず、掲示板での告知や入居者へのチラシ配布などから注意をはじめ、それでも改善しなかった場合には、直接利用者に対して注意しましょう。
入居者同士の訴訟沙汰にまで発展すると対応に多くの時間を取られてしまうだけでなく、あなたの所有不動産のイメージダウンや、入居率の低下にもつながります。大きなトラブルになる前に問題を食い止めるようにしましょう。
投資不動産のゴミ置き場は、基本的にオーナーか、管理会社が行わなければなりません。
しかし、ゴミ出しのルールが地域ごとに細かく設定されていることや、外国人の入居者が多いこともあり、必ずしもすべての入居者がルールを守ってくれるとは限りません。
そして新築物件の場合には、あなた自身が住民の入居審査をすることができますが、中古の場合には入居者が既にいる物件を購入することになります。
物件購入前にレントロールや住民のプロフィールなどの物件情報を見極めながら、迷惑をかけるような利用者がいないか見極めるようにしましょう。
不動産のオーナーになると、必ず遭遇すると言っても過言ではないのが、入居者や管理会社とのトラブルです。
複雑な人間関係の中に入って、トラブルへの対応を求められる場面がある一方、あなたが慎重に対応すれば、入居者とのより深い信頼関係が築け、途中解約を減らせるといったメリットもあります。
なかにはトラブル対応を徹底したところ、利回りが15%まで向上した物件もあるそうで、入居者が住みやすい環境作りは、不動産収益を安定、向上させる可能性を秘めているといっても過言ではないでしょう。
もし投資不動産の購入を検討されているようでしたら、購入後のトラブルとその対処法についても、この機会に考えられてみてはいかがでしょうか?