ほかに、ぜひ強調したいのが、お付き合いをする金融機関の数をなるべく増やすということ。一金融機関が、1 年に融資をしてくれる案件の数は、当然限りがあります。だからこそ、なるべく間口は広くする。多くの金融機関に足しげく通って、顔を売り、信用を得ておくことが重要です。
実際、金融機関は横並び意識が強いし、ほかの金融機関の動きもよく見ています。A 銀行から融資を得ているということが分かると、「うちからも融資させてもらいたい」という話が出てくることもよくあります。
さらに、多くの金融機関を回ると、それぞれの審査の基準も見えてきます。A銀行はこういうタイプの物件は評価してくれないけど、逆にこのタイプの物件は高く評価する傾向がある。そうした情報をその後の物件購入に活かすこともできるのです。
ときには、複数の金融機関から融資の申し出を受けることもあります。なかには「断る」ことに抵抗を覚える人もいるかもしれませんが、そこはビジネスとしてしっかりと割り切りましょう。
「より好条件を出してくれた銀行がありましたので、今回はその銀行から融資を受けることになりました」と簡潔に事実を伝えればいいのです。逆に、次回の融資依頼では、より良い条件を出してくれる可能性があります。
また、投資目標によって付き合う金融機関を変える経営者もいるようですが、私はそれほど複雑に考える必要はないと考えています。物件ごとに最も良い条件を出してくれた金融機関とお付き合いをするというシンプルな考え方でよいと思います。
以上が、私の融資に対する考え方ですが、実のところ、プロパーローン融資を受けられる大家さんの数はきわめて少ないのが実情です。アパートローンの限度額で打ち止めという人がほとんどです。なぜでしょうか。私は意識の問題が大きいと考えています。事業家、経営者としての意識です。
「不動産投資」という言葉が定着していますが、私はこの言葉に違和感を持っています。「不動産賃貸業」という表現のほうが実態を正しく表しているでしょう。要は投資ではなく事業であるということを肝に銘じる必要があると思います。
実際、金融機関も投資には融資してくれません。銀行が株式投資のための資金を融通してくれるわけがありません。金融機関が融資してくれるのはあくまでも「事業」に対してなのです。この前提を忘れてはいけません。
不動産融資の最大の利点はレバレッジにあります。そのレバレッジはプラスに働けば、大家さんにとって大きな利益となりますが、マイナスに働けば逆に大きな損失を抱え込むことになります。
その意味でも、経営者としての意識を高く持って、地に足を着けた経営が必要であるということを最後に強調しておきたいと思います。