今後は少子高齢化がさらに加速することもあって、「年金って本当にもらえるの?」「いくら貯めておけばいいの?」と不安を抱く人も多いはず。
では、老後にどれくらい資金が必要なのか、皆さんご存じでしょうか? 国が発表しているデータをもとに解説しましょう。
金融広報中央委員会が毎年実施している「家計の金融行動に関する世論調査(平成28年)」の調査結果によると、
・ 老後のひと月当たり最低予想生活費 27万円
・ 年金支給時に最低準備しておく貯蓄残高 2,016万円
という結果が出ています(対象は20代~70歳以上)。
世帯別では、セカンドライフを過ごす60歳以上の最低生活費の平均回答額は30万円、70歳以上では28万円で、より現実に即した金額といえるでしょう。
総務省の「家計調査(2人以上の世帯)」平成29年2月分によると、無職世帯(セカンドライフ世帯が多く含まれます)の1カ月の平均支出は、以下のとおりです。
<内訳>
・食費 59,952円
・住居 11,466円
・水道光熱 26,699円
・家具、家事 7,174円
・被服費等 4,720円
・保健医療 14,030円
・交通通信 24,397円
・教育 106円
・教養娯楽 21,276円
・その他 42,993円
(主な内訳-理美容、おこづかい、交際費、嗜好品、諸雑費など)
・税金 社会保険料 35,048円
単純に、85歳まで生きると考えると、年金が支給される65歳からカウントしたとして、
約25万円×12カ月×20年=6000万円ということになります(2人以上の世帯)。
現在、政府と日本銀行は経済政策の一環とで、物価を毎年2%ずつ上げる(インフレにする)という目標に掲げています。
もしこれが現実になった場合、生活費をはじめとする支出の負担は大きく増えることとなります。
インフレになるということは円安になることとイコールのため、輸出企業やそこで働く従業員は恩恵を手にできるでしょう。
しかし最も打撃を受けるのは、「年金生活者」です。
つまり、今25万円の生活費でやりくりしている家計の場合でも、インフレが進行すると物価が上昇して生活が成り立たなくなる恐れがあるということです。
現在25万円で買える物やサービスは、物価が2%ずつ上昇すれば30年後には約45万円。約半分しか買えないということになります。そうなった時には生活費を20万円削らなくてはなりませんが、これはどう考えても現実的ではありません。
平成28年時点での年金支給額の平均は、
無職一人暮らしで月額111,375円、無職夫婦世帯は月額193,051円です。
無職夫婦世帯の場合でも、65〜85歳までの20年間に得られる支給額は、
19.3万円×12カ月×20年間=4,632万円です。
上述したように同じ条件で6000万円は必要なので、最低でも1368万円の貯金が必要です。
ただし、物価上昇リスクはもちろん、今後は支給年齢の引き上げや支給額の引き下げの可能性は十分にあり得ます。
したがって、冒頭で紹介した「年金支給時に最低準備しておく貯蓄残高 2,016万円」でも足りない恐れがあるのです。
普通に働いていて2,000万円貯金するだけでも十分大変なのに、それでも足りないかもしれない……こうなると、やはり何か安定的な収入源を持たなければと多くの人が考えるのは必然的な流れといえるでしょう。