「年収が1000万円を超えたら法人化したほうがいい」「とりあえず、1棟目から法人で買っておくべき」などのアドバイスを耳にしたことがある人は多いと思います。
しかし、これは本当に正しいのでしょうか?
ここでは法人化のベストタイミングについて解説していきます。
はじめに、法人化を考えるにあたって、どのような法人を設立するのかも決めなくてはなりません。不動産投資家が設立する法人は、主に以下の2種類があります。
・不動産管理法人……不動産を持たず、不動産管理を行う法人
個人が所有する物件の管理を請け負う法人です。個人が不動産物件を所有していれば、すぐ設立できて手軽ではありますが、この形態で管理料が高額だったり管理実態がなかったりすれば、税務上で否認される可能性もあります。
・不動産取得法人……不動産を所有する法人
投資家が融資を受けて個人で買い進めることができなくなれば、法人を設立して新たに借り入れができるという、まさに物件を取得するために設立する法人です。
節税効果が大きいのは、後者の「不動産取得法人」です。土地建物を法人が所有するため、家賃収入も法人の事業所得となります。
デメリットでいえば、法人を設立してから買い進める分にはいいのですが、個人が取得した物件を法人に所有移転させる場合には、登記費用や不動産取得税といったコストがかかるということです。
不動産投資で法人を設立するタイミングには、大きく分けて2種類あります。
一つ目は、個人で買い進めた後に法人を設立する場合です。
個人から法人化する目安は、明確に決まっているわけではありません。所有する物件の規模が30室になったとき、また不動産所得が1000万円になったときなどといった個人的な目標に応じて考え方が異なるのが一般的です。
とはいえ、基本的には個人の所得と不動産所得のバランスを見て法人化することが重要です。所得税率の高い方であれば、少しでも早い段階で法人化を検討しましょう。
二つ目は、物件購入前に法人設立をする場合です。もともと高年収で所得税率が高い人であれば、こちらのほうがメリットを得られます。
注意点は、属性と収入がもともと高い方であれば、法人にした場合の給料の支払先、具体的には「給料を支払える親族役員」を確保する必要があるということです。
支払先を確保できないと、法人が給与所得の高い役員(御自身)に払うしかなく、個人の税金が高くなるため、法人を利用した節税効果が得られない状況となってしまうのです。
また、最初の物件購入の時に法人化してしまうと、法人としての実績がないので融資の審査が通りにくくなる可能性がありますので注意が必要です。
ただ、あくまで個人の資産を管理する法人ということで、融資の審査の際には代表者の属性で判断されることもあります。
これらは金融機関によって判断基準が異なりますので、一度不動産会社の担当者に相談してみるのもよいかと思います。
法人化は税金対策としては効果的だといえます。
とはいえ、「誰もが」「いつでも」法人を設立すればよいというわけではありません。タイミングを誤って法人化してしまうと、かえって金銭的負担が増えてしまうということになりかねません。
つまり、給与収入の高いサラリーマンなど、すぐにでも法人化をすべき投資家がいる一方で、法人化しなくても問題のない不動産投資家もいるのです。
具体的に挙げるならば、事業規模が小さい(区分1戸しか持っていない)投資家や、個人の所得がさほど多くない投資家です。
とはいえ、法人化は拡大思考の方にとっては重要な戦略ですので、将来的に複数棟所有する可能性が高いという人は、早めの法人化を検討したほうがよいといえるでしょう。